カルダノをヴォルテール時代へ引き上げる”CIP-1694”とは?

カルダノについて

IOGチームは、カルダノがヴォルテール時代に突入するための準備をしています。オンチェーンガバナンスの話題に興味があるなら、CIP-1694を絶対に見逃してはなりません。このカルダノ改善提案(CIP)は、分散型意思決定のための基礎を定義しています。これは、Cardanoプロジェクトの分散型管理への最初の大きな一歩であり、大きな力をカルダノコミュニティに渡すことになるでしょう。

結論

・現在、7つのガバナンスキーは3つの組織に分割されています。
・CIP-1694では、憲法と呼ばれる文書と、ガバナンスを監督する委員会が設けられる予定です。
・また、Delegation Representative(DRep)という新しい役職が設けられ、興味のある人なら誰でもその役割を担うことができます。また、DRepへ自分のステークを委任することも可能です。
・新しいガバナンスモデルにおいて、主な変更は、委員会、DReps、SPOsによって決定されます。

カルダノのガバナンスの現状と問題点

現在、すべてのガバナンスアクションは、特別なガバナンストランザクションを通じて開始されなければなりません。このトランザクションは、7つのガバナンスキーのうち少なくとも5つによって承認されなければならず、7つのガバナンスキーのうち、3つのガバナンスキーはIOGが、2つはCardano Foundationが、残りの2つはEmurgoが保有しています。

ガバナンストランザクションには、必要なアクションの詳細を記述する特別なパラメータが含まれています。これらのアクションは、Cardanoプロトコルのパラメータの変更と、プロジェクトのトレジャリーおよびリザーブからのADAコインの移動に関係しています。

ガバナンス・トランザクションが必要な数の鍵で署名されている場合、エポック境界で処理されます。これは、アクションが実行されることを意味します。

重要なカルダノパラメータの1つは、プロトコルの主要バージョンです。もし、ガバナンストランザクションが処理されると、ハードフォーク、すなわちカルダノプロトコルのアップグレードが開始されます。ですが、カルダノプロトコルのパラメータ(例えば、Kパラメータ)を変更することは、プロトコルの主要な変更を必要とせず、事実上いつでも初期化することができます。

ハードフォークは特別なケースであり、新しいバージョンへの移行が承認される場合、プール運営者とユーザーは事前に新しいバージョンのソフトウェアをインストールする必要があります。また、アップグレードは、取引所やウォレットを構築する第三者企業等のチームによってサポートされなければなりません。ハードフォークコンビネーターは、すべての関係者がハードフォークの準備ができている場合にのみ発動することができます。

したがって、主要なプロトコルのバージョンに関連するパラメータを変更することは、新旧両方のガバナンスモデルにおいて特別なアクションとみなされます。

ヴォルテールの時代に入ることで、現行モデルの欠点が解消されます。現在のモデルは分散型ですが、投票に参加できるのは3つの組織だけです。ハードフォークを行うかどうかについては、現状ADAホルダーは投票できません。チームはプール運営者やコミュニティとプロトコルのパラメータ変更について議論していますが、プロセスをコントロールできるのは、IOG、CF、Emurgoの3つの組織だけです。さらに、その意思決定がどのような原則に基づくべきかを定義した文書やガイダンスも現在ありません。

憲法(Constitution)と憲法委員会(Constitutional Committee)

オンチェーンガバナンスへ向け、カルダノの核となる価値観と指針を定義するために、憲法(Constitution)と呼ばれる文書が作成される予定です。後の段階で、この文書の一部がスマートコントラクトの形になる可能性があります。初期段階では、オフチェーンの文書とし、そのハッシュはオンチェーンでカルダノ台帳に保存される予定です。

また、ガバナンスを監督する責任を持つメンバーまたは組織で構成される憲法委員会(Constitutional Committee)が設置される予定です。すべてのガバナンスアクションは、憲法に従わなければなりません。

重要なことは、憲法委員会は他の主体と比較して特別な権限を持たないということです。他の主体は、いつでも憲法委員会のメンバーを交代させることができ、すべてのガバナンス行為を承認するかどうかを選択することが可能です。つまり、この憲法委員会は、他の主体と非常に類似した権利を有していると言えます。憲法委員会の存在意義のひとつは、ブートストラップの問題を解決することであり、憲法委員会は、メンターやアドバイザーとして活動することができます。

また、憲法委員会は、以下のいずれかの状態になります。

・通常の状態(信任状態)
・不信任状態

憲法委員会が「不信任」の状態にある場合、憲法委員会はいかなるガバナンスアクションにも参加できなくなり、ガバナンスアクションが実行される前に交代させる必要があります。憲法委員会が「不信任」の状態になった直後は、未処理のガバナンスアクションはすべて無効となります。この場合、SPOとDREPはコミュニティの意思を代表することになります。

初期段階では、憲法委員会のメンバーは、カルダノを設立した組織のコアメンバーやコミュニティの積極的なメンバーで構成される予定です。委員会のメンバー数やクォーラム(ガバナンスアクションの実行に必要な投票数)は定義されていません。

通常の状態(信任状態)の場合、「ガバナンスアクション2」によって憲法委員会を交代させることができます。その場合、既存の憲法委員会とDRepsの承認を得る必要があります。また、不信任の状態では、憲法委員会は「ガバナンスアクション2」によって交代させることができますが、SPOsとDRepsによって承認されなければならなりません。ガバナンスアクションに関しては後ほど解説します。

Delegation Representative(DRep)は、登録によってADAホルダーであれば、誰でも立候補が可能な役職です。DRepの登録は、既存の(証明書による)ステークの委任の仕組みを参考にしました。

ステーキング・キーの所有者は、自分のステークをDRepに委任することができます。 もし誰かが、ガバナンスに積極的に参加したくないが、経験豊富な誰かが自分の代わりに意思決定をしてくれることを望む場合、自分のステークを選ばれたDRepに委任することができます。これは、ADAをプールに委任するのと同じ原理です。

従来のステーク・クレデンシャル(資格)ごとの分配、ステーク・プールごとの分配に加え、新たにDREPごとの分配が導入される予定です。

また、SPOがDREPになることができる点は注目すべき点です。これを妨げる理由はありません。しかし、DREPは必ずしもSPOである必要はありません。これにより、誰でも、自分自身のプールを運営することなく、ステークの委任によって強い地位を獲得することができます。

更に重要なのは、憲法委員会メンバーやDRepsに本人確認が要求されないということです。 コミュニティとしては、DIDのようなもので十分だと予想されます。ID認証を強制することは、分散化の原則に反することになります。

ガバナンス・アクション

初期段階では、6つのガバナンス・アクションがあります。ガバナンス・アクションとは、特別なトランザクションによって引き起こされるオン・チェーン・イベントのことで、期限が定められており、それを過ぎると実行することができなくなります

ガバナンス・アクションは、十分な数の賛成票を得ると、可決されたとみなされます。逆に、必要な数の票を得られなかった場合、無効とみなされます。アクションが可決された場合、ネットワーク上でそのアクションが有効化されると、そのアクションは実行されます。またアクションは、憲法委員会が「不信任」状態になった場合、可決されていても取り下げられることがあります。それでは、イベントの一覧を見てみましょう。

アクション1.不信任の申し立て
アクション2.新しい憲法委員会 および/または クォーラムサイズの設定
アクション3.憲法の更新
アクション4.ハードフォークの開始
アクション5.プロトコルパラメータの変更
アクション6.トレジャリーからの出金

*クォーラム(ガバナンスアクションの実行に必要な投票数)

ADA保有者は、ADAのデポジットを必要な枚数用意すれば、誰でもガバナンスアクションを提出することができます。デポジットは投票後、結果にかかわらず返却されます。

ガバナンスアクションは、オンチェーン投票によって承認されます。アクションの種類によって、異なる条件が要求されます。ガバナンスアクションは、以下の特定の組み合わせが発生した場合に可決されます。

1. 憲法委員会がそのアクションを承認する。
2. DREPSがそのアクションを承認する。
3. SPOがそのアクションを承認する。

憲法委員会の投票の場合、承認には、クォーラムで定義された数のメンバーが賛成票を投じなければなりません。DRepsまたはSPOsの投票の場合、YESに投票した人が支配するステークが、登録された投票権の総数に対して一定の閾値を超える必要があります。

最初のガバナンスアクションである、不信任の申し立ては、憲法委員会では投票されず、DRepsとSPOのみによって投票されます。ほとんどのガバナンスアクションは、委員会、DREPS、SPOsの承認を得なければなりません。詳しくはCIP-1694をご覧ください。(今後こちらのサイトも噛み砕いて説明する予定です。)

投票は、オンチェーンでのトランザクションを通じて行われ、そのトランザクションには、特に、ガバナンス・アクションID(各アクションは独自のIDを持つ)、役職(委員会メンバー、DRepまたはSPO)、投票(YES/NO/ABSTAIN)が含まれていなければなりません。

また投票は、各ガバナンス・アクションに対して複数回行うことができます。正しく提出された票は、そのガバナンスアクションの古い票を上書きします。

最後に

ヴォルテールの時代に入ると、トレジャリーのADAコイン、プロトコルパラメータの変更、そしてハードフォークまでもが、カルダノの創設メンバーではなく、コミュニティによって決定されます。これは、分散化されたプロジェクトの管理において重要なステップです。

ブロック生成は、現時点では分散型です。そして、現在の7つのガバナンスキーが廃止されれば、コミュニティがカルダノを管理することになります。これは規制の観点からも重要なことであり、プロジェクトをコントロールする主体がいなくなるためです。IOGはソースコードの修正に関わるかもしれませんが、ハードフォークの開始、つまりアップグレードの展開は、コミュニティの手に委ねられることになります。コミュニティはカルダノに責任を持つことになります。もしCIP-1694が実装された後、規制当局が何かしようと思っても、すべてのADA保有者とコミュニケーションを取らなければいけなくなるでしょう。

今回はCIP-1694を解説しましたが、もっと深く知りたい、難しすぎてよく分からない、など様々な意見があると思います。そこで今後、かなり噛み砕いたCIP-1694の解説や、CIP1694の徹底解説などの記事を作成していこうと思います。

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参考文献

CIP-1694 README.md

この記事の原文:CIP-1694: Cardano enters the Voltaire era

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