AMM(自動マーケットメーカー)とは
「AMM」とは「Automated Market Maker」の略で、自動マーケットメーカーとも言われており、自動的に流動性が提供できる仕組みです。Uniswap、SushiSwap等のDEXでも取り入れられています。
また、前回の記事でAMMはDEXの形式を二つに分類した時の一つであると紹介しました。
前回の記事をご覧になっていない方はこちらからどうぞ。
オーダーブック形式 と AMM形式の比較
次に、オーダーブック形式との比較でAMMの理解をより深めていきましょう!!
オーダーブック形式とは?
オーダーブック形式(板形式)は一般的に伝統的な金融、古典的な金融で用いられています。板取引の説明を簡単にすると、買い手と売り手をマッチングさせる仕組みです。
また、DEXの形式を二つに分類した時の一つでもあります。
伝統・古典的な金融の一つとして、株の取引があります。
株の取引では、買いたい人と売りたい人が売買をし、売値と買値の値段が合致すると取引が完了となります。
これを例にオーダーブック形式を説明すると、
AさんがY社の株を1000円で売りたい。BさんがY社の株を900円で買いたいとします。
しかし、これでは取引が成立しませんよね。
そこで、Aさんは仕方ないか…といってY社の株を950円で売ろう。Bさんも仕方ないか…と思ってY社の株を950円で買おう。ということになりました。
よって、お互いの言い値が合致したので取引成立と言えます。
これがオーダーブック形式(板形式)です。
オーダーブック形式とブロックチェーン技術の問題点
では、このオーダーブック形式を仮想通貨の取引に活かそうとした時にどうなると思いますか?
仮想通貨はブロックチェーン技術を使っており、信頼性が高いのが特徴です。
しかしその反面、取引情報を一つ一つをブロックチェーンに書き込むこととなるので、かなりコストがかかってしまいます。
この様に、コスト面でオーダーブック形式の取引は不向きでした。
そこで、新しい仕組みのAMMが考え出されました。
AMMの仕組み
全体像から見た仕組み
AMMは、DEXに流動性を提供します。オーダーブック形式(板形式)の取引は、交換したい人同士がマッチングしなければ成り立つことはありません。
つまり、ある仮想通貨Yを売りたい人が注文を出し、ある仮想通貨Yを買いたい人がそれを買うことで成り立ちます。なので、取引所では常に多くの参加者がいなくてはなりません。取引所に多くの参加者がいる状態のことを流動性が高いと表現します。
AMMでは、あらかじめDEX内に仮想通貨ペアをプールしておき、そのプールされた仮想通貨の中から自動的に交換が行われるという仕組みにすることで、流動性の高い取引所を実現しています。
想像しにくいと思うので、図を見て理解を深めましょう。
図に表すとこんな感じです。
AMM方式のDEXでは仮想通貨のペアを預けることを「流動性を提供する」と言ってもいいと思います。また、仮想通貨のペアは”価値”が1:1になるようにプールしなければなりません。
図の例を紹介します。(ここでは50 BTC と 3,000,000USDT が同じ価値であると仮定します)
左下のLPからDEXが「50 BTC : 3,000,000 USDT」のペアをあらかじめ預かったとします。すると、赤のスーツの人はDEXを通して1BTC を 60,000 USDTにすぐに交換できます!!
この様にして、DEX上ではうまい具合に取引が行われています。
ここで用語の説明を少し挟みます。
LP : Liquidity Providerの略で日本語にすると流動性提供者となります。
流動性プール : 流動性プール(Liquidity Pool)とは、分散型取引所(DEX)が預かっている暗号資産在庫の保管場所を指します。
魔法の数式「x*y=k」から見た仕組み
ここでは、Uniswapのホワイトペーパーをもとに解説します。少しややこしいかも知れませんが、分かりやすいように説明します。なので安心して下さい。
「x*y=k」の「*」は「×(掛け算)」と同じです。数式を置き換えると、
「x×y=k」となります。こうすると私たちが普段見慣れた式になりましたね!!
(https://hackmd.io/C-DvwDSfSxuh-Gd4WKE_ig#Example-ETH-%E2%86%92-OMGより引用)
まずはあなたは、10ETHと500OMG をプールしました。先ほど述べたように、仮想通貨のペアは”価値”が1:1になるようにプールしなければなりません。
つまり10ETHと500OMG の価値は「1:1」であると言えます。
また、上図のBuyer が1ETHをOMGに変えたいと思っているとします。
ここで、先ほど紹介した「x*y=k」の登場です。この式の意味は少し難しく言うと、
「ETHの総量とOMGの総量をかけた量を不変量とする」ということです。
と言っても分かりにくいと思うので、このポイントだけ抑えて下さい。ここでのポイントは「k(不変量、Invariant)」を定めることです。「k」を定めることにより、「x」もしくは「y」のどちらかが分かった時点で、もう片方の文字も求めることが出来ます。
「k(不変量、Invariant)」は上図でいうところの5000です。
5000の求め方は、
10ETH × 500OMG=5000 です。
この式は、あなたが預けた 10ETHと500OMGを掛け合わせて、不変量5000になったという意味です。
それでは!!このことを踏まえ、先ほどの Buyer が1ETHを交換したいという話を思い出してみましょう。
1ETH交換するということは、 Buyer が、流動性プールに1ETHを持ち込んできたことになります。
そうすると、先ほど、10ETHだったものが、11ETHになりますよね。
5000は不変量なので、この値を変更しないために、次の計算をします。
ここでは分かりやすいように「x×y=k」に数字を代入していきましょう!!
x × y = k ←魔法の数式
11ETH × ?OMG =5000 ←数値を代入した
5000=11ETH × ?OMG ←右辺と左辺を入れ替えた
5000 ÷ 11ETH=?OMG ←先ほどの式の両辺を11ETHで割った
5000 ÷ 11ETH=454.5 OMG
となります。先ほども述べましたが、この様に「k」を定めてしまうことで「x」もしくは「y」のどちらかが分かった時点で、もう片方の文字も求めることが出来ます。
よって、もともとOMGは500あったわけですから、
500-454.5=45.5OMG
つまり、Buyerに渡すOMGは45.5OMGになったということです。
ここで疑問が生まれます!!!!!
「1ETH渡しているのに何で50OMGもらえないの?!」
ここがこの話の肝です!!
最初、あなたがプールした時は「10ETHと500OMG」の価値が同じでしたよね?よって、最初、あなたがプールした時は「1ETHと50OMG」の価値が同じだったと言い換えることが出来ます。
しかし、Buyerもらえるのは45.5OMG…。
ということは!Buyerが流動性プールに1ETHを持ち込んだことで、もともと1ETHに対して50OMGだった価値が変わったということです。
1ETH:50OMG→1ETH:45.5OMG
になっていますよね。
つまりこれは、OMGの価値が上がっているということになります。
これまで、1ETHに対して50OMGが必要だったものが、45.5OMGで良くなったわけですからOMGの価値が上がっていますよね。
つまり、少ないOMGで1ETHを手に入れられるということです。
(本来は手数料が差し引かれますが、話が複雑になるので省略しています。)
これを、何度も繰り返すことで、OMGの価値がどんどん上がって行くと想像できると思います。
つまり、この一連の流れにより、OMGを欲しいと思う人が増えれば増えるほどOMGの価値は上がっていくという需要と供給の自然なシステムを導入することができました。
このような画期的な仕組みができたことで、DEXは見事に成功しました。「x*y=k」という簡単な式でここまで出来るって感動ですね。
流動性マイニングとの関わり
AMMでは、仮想通貨のペアをプールしてくれる流動性提供者に、報酬として手数料の一部や、DEXが発行するトークン(ガバナンストークン)を渡すことでより流動性提供者を呼び込む仕組みが取り入れられています。
このような仕組みは流動性マイニングともいわれます。
この仕組みにより、多くの人が流動性を提供し、流動性の高い取引市場を実現できます。
流動性マイニングについて深く知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
最後に
今回はシステムや仕組みの話が多かったと思うので読み疲れたと思います。しかし、この様な画期的な仕組みに触れることにより、自分の知識がグレードアップされていると考えるとワクワクしませんか?
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